平成29年6月 定例会(第340回)
◆3番(上田貢太郎君) おはようございます。自由民主党の上田貢太郎でございます。それでは、議長のお許しをいただきましたので、早速2月議会に引き続き質問に入らせていただきます。知事初め執行部の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
では、まず最初に、コンテンツ産業についてお伺いいたします。
経済産業省が昨年公表した資料、コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性によると、映画やアニメ、テレビ番組、音楽、ゲーム、書籍などの日本のコンテンツ産業の市場規模は合計で12兆円を超える状況にあるとされています。その内訳を申しますと、映画を含む映像関連産業の約4兆3,000億円を初めゲーム関連産業の約1兆7,000億円などとなっております。このように大きく成長してきたコンテンツ産業は、書籍、雑誌など苦戦している部門もあるものの、総じて今後とも成長が見込まれる産業分野ではないかと考えます。成長が見込まれるコンテンツ産業を本県産業の振興にぜひ生かしてもらいたいと考えています。
高知県においては、これまでもコンテンツ産業の振興に取り組まれ、本年4月からは商工労働部において、さらに取り組みを強化するための体制整備も行われたところであります。
そこで、率直にお伺いをいたしますが、県としてこうしたコンテンツ産業を今後どのように振興していくおつもりなのか、知事の御所見をお伺いいたします。
また、コンテンツ産業の振興を図っていくためには、その担い手となるエンジニアやクリエーターなどをいかに確保していくかが重要となってくると考えます。その具体的な取り組みについて商工労働部長の御所見をお聞かせください。
次に、映画などを生かした観光振興についてお伺いいたします。
2月議会でも御紹介させていただきました映画サムライせんせいもついに今月26日にクランクインいたしました。そして、その2日前の24日には尾崎知事や浜田議長にも御出席いただき、撮影討ち入りパーティーを開催いたしましたが、主演の市原隼人さんを少しでも見ようと全国各地から約800人の方に御出席いただき、その関心の高さには本当に驚きました。高知ロケは約3週間、関係者がホテルに泊まり、夜は土佐の味めぐりに繰り出し、町中では県民の皆さんがどこで撮影しているのか、フェイスブックやラインなどSNSでも大盛り上がり、土佐の暑い夏が始まります。
2月議会でも申しましたが、長期的展望のもとに映画やドラマの誘致を続けていくことで高知県の魅力を広く発信し積極的にインバウンドを獲得していく姿勢こそ、今県が力を入れなければならないところではないでしょうか。
インバウンドや観光誘致、これはどの自治体も今必死に模索、検討されている課題です。そこから頭一つ抜きんでるためには、あらゆる状況を想定して取り組まなければなりません。フィルムコンテンツの果たす役割や影響力は大きく、高知県にとって非常に大きな観光誘致ツールになり、これを利用することにより大きなリターンが期待できるのではないかと考えます。
そこで、他県の取り組みを御紹介いたしますと、特に映画先進エリア、九州のフィルムコンテンツにかける意気込みといいますか、勢いには驚かされるものがございます。
TIFFCOMでの九州PRブースの営業戦略は尾崎知事も御存じだと思います。このイベントは、東京国際映画祭に併設して行っている国内最大の国際コンテンツ見本市で、2016年は49カ国1,539人のバイヤーが世界中から参加。延べ来場者数約1万8,000人という大きなイベントでありますが、そこに、九州7県が協力する一般社団法人地域企業連合会九州連携機構が、世界各国のコンテンツ制作者へ九州をロケ地とした映像コンテンツを制作、放映、配信していただき、九州への認知、関心を高めインバウンド増を目的にブースを出展しております。ある時間になると、バイヤーの興味を引くために九州の地場産品や地酒を升酒で振る舞うそうで、常連の海外バイヤーらは、日本酒、ジャパニーズサケを目的に九州ブースに集まり、ほかのブースは閑古鳥が鳴いているようです。それが直接的な要因かはわかりませんが、結果、北九州を初めとする九州エリアへの認知、関心が高まり、インバウンドの観光客がついてくるというわけです。
また、フィルムコンテンツの売り込みでは、映画「あらうんど四万十~カールニカーラン~」もここでメキシコのバイヤーとつながって、メキシコの60都市、100スクリーンで公開され、台湾のエバー航空では機内上映も行われました。そして、内閣官房副長官を議長に、映画産業の海外展開に関する検討会議が現在行われておりますが、映画あらうんど四万十が成功例の一つとしてそこで紹介されたそうであります。
土佐の先人坂本龍馬は、時代を読み、行動し、日本を動かしました。彼のすばらしいところは、維新の立役者でありながら新たな発想で動いた商売人であったという点でしょう。
そこで、映画やドラマの誘致を通じた観光振興策に今後どのように取り組んでいくのか、観光振興部長の御所見をお聞かせください。
また、2月議会でも御案内いたしましたが、高知の経済界、映画関係者らが中心となって立ち上げるNPO団体、仮称高知フィルム・オフィスも設立目前です。さらに、クラウドファンディングの活用の勉強も始め、物心両面での継続的な映画、ドラマなどの制作のサポートを目指し、高知県観光コンベンション協会と連携しつつコンテンツビジネスの支援を担っていきたいということで組織づくりの検討を進めております。
活動としては、受け身でなく積極的に外に対してアプローチしていく態勢を整え、企画の立ち上げ、誘致提案、映画祭などのイベントを初め東京や海外などでの映像を中心にした催し物も行っていくようです。そして、外部から高知へ提案される映画、テレビなどの窓口となり、不確定要素の多い映像作品の真偽を判断するフィルターの役目も果たし、本県のためになる健全な映画制作のための組織として運営していくそうであります。知事の目指す「龍馬伝」435万人を超え、そして高知県観光のもう一段の飛躍のためにも、こうした有志の取り組みは非常に期待が持てると思います。
映画祭はマスコミが告知することによって映画祭以外の観光客を誘致することができます。映画あらうんど四万十をきっかけに行われた四万十映画祭は2年お休みしていたようですが、今期の四万十市議会では四万十映画祭の予算化が決まったと聞いております。当然、県もこの映画祭の支援は行うのでしょうが、これからは仮称高知フィルム・オフィスも積極的にかかわることができればと考えているようです。
また、2月議会では、幕末を題材にした映画祭について御提案いたしましたが、来年3月高知市において土佐のおきゃくに合わせ開催することが決定いたしました。全国から幕末を題材にした約20作品を集め、出演者にもお越しいただき、幕末維新博とも連動できる企画となりますので多くの観光客を呼び込むことが期待されます。
そこで、幕末を題材にしたこの映画祭の開催について県としてどのような連携・支援が考えられるのか、観光振興部長の御所見をお聞かせください。
続きまして、高知版CCRCの取り組みについてお伺いいたします。
本年4月28日、平成29年度第1回高知県移住推進協議会が行われ、平成29年度第1・四半期移住促進の主な取り組みが発表されました。そこには、高知家生涯活躍のまち、高知版CCRCの取り組みの推進、また高知市を中心とした2段階移住の取り組みの展開ということが記されています。高知県内の市町村が策定されています、まち・ひと・しごと創生総合戦略には、幾つかの自治体がいわゆるCCRC、生涯活躍のまちの取り組みを位置づけしておられ、高知市もこの生涯活躍のまちの取り組みをまちづくりの方策の一つとして検討するとされています。
また、高知家生涯活躍のまち構想にも、高知市から中山間地域の土佐町へ2段階で移住した場合の収支シミュレーションも示されております。私は、この高知市との間の2段階移住がCCRCの推進の鍵を握るのではないかと考えております。
ただ、ここへ来てこの高知市の生涯活躍のまちの取り組みに対する具体的な動きが、まだ見えてきていないところを懸念しております。昨年度にもお話ししましたが、2段階移住の最初の1段階目の最適地として朝倉の造幣局跡地と合築図書館の西敷地を挙げておりましたが、造幣局跡地は不可能とのことで、残る適地は合築図書館の西敷地ではないかと考えております。この合築図書館の西敷地の活用につきましては、高知市はパブリックアンケートを実施いたしましたが、その中にはCCRCという言葉はなかったようです。最終的には、本年秋にプロポーザルで決定するようです。
しかし一方で、先ほども申し上げましたが、高知家生涯活躍のまち構想、高知県版CCRC構想が策定され、まち・ひと・しごと創生総合戦略に沿った交付金措置を受けた土佐町、嶺北地区は大変活発な動きを見せておられます。土佐町は本山町と連携し、嶺北版CCRC構想の策定やモデル事業として都会のシニア世代の方々を対象に短期の移住体験を行うCCRCモニターツアーを実施するほか、嶺北地域CCRCシンポジウムも開催するなど、土佐町を中心とする嶺北地域は非常に積極的な動きをされておられます。また先日、山本幸三地方創生担当大臣が高知にお見えになったときも嶺北を訪れ、大臣も非常に嶺北地域の活動に感動をされたと聞いておりますし、その後、山本大臣御自身もゴールデンウイークにアメリカのCCRCを視察されております。
そこで、中山間地域においては、特に移住政策の取り組みが不可欠だと思いますが、嶺北版CCRC構想を今後県としてどのように支援していくのか、産業振興推進部長の御所見をお聞かせください。
次に、高知市を中心とした2段階移住の取り組みについてお伺いいたします。高知県に移住を考えている人に、まず都市部の高知市で生活をしてもらい、そこを拠点に自分に合った移住先を見つけてもらう2段階移住の取り組みを高知市も始めたことが先日の報道で取り上げられていました。この取り組みは、田舎暮らしに憧れているが不安が先立ってなかなか踏み込めないという都会の人を新たなターゲットとして掘り起こし、移住者を確保しようとするもので、今後の取り組みの拡大が期待されます。
そこで、高知市を拠点とする2段階移住の取り組みを今後どのように支援していくのか、産業振興推進部長にお伺いいたします。
次に、竹の活用についてお伺いいたします。
近世に日本に移入された外来植物であるモウソウチクは、1950年代ごろまでは木材やタケノコを得るために管理された竹林にて栽培されていました。竹林の周囲は深さ1メートル程度の空堀を掘りめぐらすなどの対策がなされていましたが、輸入品のタケノコが出回ってタケノコ栽培が経済的に成立しなくなり、竹材の需要も減少すると、各地の竹林は管理されなくなっていきました。
元来繁殖力が異常に強い樹種であるモウソウチクは、これによって竹林の周囲に無秩序に進出し、既存の植生を破壊していきました。モウソウチクが進出するとアカマツやクヌギ、コナラなど、かつて里山で優勢であった樹種が置換され生態系が単純化してしまうことや、モウソウチクは土壌保持力が低いため崖崩れが起きやすくなるなど、各種の害が発生することが現在問題視されています。また、他の樹種が侵入しづらい杉、ヒノキなどの人工林にも容易に侵入します。樹高が竹の背丈より低い場合はほぼ全ての杉が枯死します。竹よりもはるかに樹高の高い杉、ヒノキ林でも水吸収の競争に起因する枯死が報告されています。
本県には大きな竹害の報告は少ないようですが、林野庁四国森林管理局の方からお話を伺いますと、本県における竹害の報告が少ないというより、竹害の正確な調査には莫大な費用が伴うため実施されていないのが実情であるようです。
また、竹害においても国の支援策として助成制度はあるもののランニングコストの、特に伐竹、搬出、移送などに関しての継続的な支援制度はなく、現在は3年の支援が限度であるとのことでございます。御承知の方もいらっしゃると思いますが、3年間の期限つき助成制度は、南国市が利用し一定の成果をおさめたようですが、今後の補助制度は未定と聞いております。
そうした制度下での竹害対策として、竹の燃料化をさまざまな研究グループが試みましたが、竹は塩素とカリウムを多く含み、そのまま燃焼するとボイラーを傷めたりダイオキシンを発生させたりするため、これまで発電燃料には不向きとされてきました。
そんな中、本年3月9日、日立製作所が竹を木質バイオマス発電に利用できる改質技術を開発したと発表しました。早速、同社の四国地域の担当者とお会いしお話を伺いましたが、伐竹と集材及び竹のみを使ったバイオマス発電においては、さまざまな困難もあることを知りました。一般的な竹収集では竹を定尺に玉切りし、枝払いして収集していますが、大半の作業が人手によるもので原料コストを引き上げています。日立では、重機による竹の伐採及び伐採直後に竹専用細断機で細断し、気流搬送によりバキュームカーで収集することが可能であることを確認し、これにより従来の伐採収集に比べ輸送効率が3倍から4倍に向上することから、3分の1から5分の1程度の費用低減が可能であると推定しており、原料コスト削減に寄与できるそうです。
また、竹の改質、カリウムと塩素の溶出施設に関しては、25メーター掛ける25メータープールがあれば可能であり、溶出液は高質の液体肥料としての利用、販売も可能であり、そうした施設やシステムを検討するのであれば、日立が指導し品質保証も行いますとのお話をいただきました。
先日、委員会で視察に伺いましたが、木質バイオマス発電所でも燃料となる木材の不足が見られると聞いており、杉、ヒノキにかわる新たな素材として、私は竹に注目してはと御提案申し上げます。
とはいえ、いきなり竹を全域で大々的に集材するのではなく、例えばモデル地域を選定し、国、県、民間企業の連携で竹を用いた高知発の新たなエネルギー事業システムの構築を目指してはいかがかと考えますが、林業振興・環境部長の御所見をお聞かせください。
続きまして、木造住宅の耐震性に関しまして御質問いたします。何が起こるか想像もつかない、これが地震災害です。さきの熊本地震で私どもは大きな教訓を得ることができました。平成7年の阪神・淡路大震災を契機に木造建築物の耐震基準が明確化され、最新の耐震基準で建てられた住宅は震度6強から7程度の揺れでも倒壊、崩壊しないと言われていました。しかし、熊本地震では法で定められた耐震基準を満たしていても決して安心できないということが証明されたのです。一例を挙げますと、発注者の要望により開放感のある空間をということで1階のリビングを20畳と広くとったため、壁の直下率、すなわち1階と2階の壁がつながっている率が低く、2階の負荷により倒壊した家屋がありました。このように発注者の要望を受け入れることで、結果的に倒壊してしまいましたが、この建物は違法建築ではありませんでした。しかし、床ばりと胴差しを大きくし、間柱や筋交いをふやすなどして2階からの加重を分散させれば、倒壊を免れた可能性も否めません。
益城町では、最新の耐震基準で建てられた319棟のうち7棟が倒壊、崩壊しました。発注者の意向もありますが、今後安心して生活できる建物を提供しなければならないという立場から、新たに建築する住宅については設計者や建築業者が発注者に対して十分な説明を行うことが重要ではないでしょうか。
県民の生命、財産を守るための木造住宅の耐震性の確保に係る県の取り組みについて土木部長の御所見をお聞かせください。
次に、鉄筋コンクリート建築物に関しまして御質問いたします。熊本地震では、マンションなどの知られざるリスクも浮かび上がってきました。昭和27年から、地震地域係数という考え方により、建築基準法によって求められる耐震性が地域によって異なることとなりました。この係数は過去の地震の記録の研究に基づき定められたものであります。地震地域係数が熊本では0.8または0.9ですが、1.0と比べて耐震性が1割から2割低い基準となります。
関東大震災で被害を受けた首都圏や東南海地震で被害を受けた東海地域は1.0とされていますが、国の定めた地震地域係数は、熊本が0.8または0.9、そして南海トラフ地震が近い将来発生するとされる高知も0.9となっています。0.8は福岡、佐賀、長崎、鹿児島、山口など、そして沖縄の0.7などがあります。四国内では、徳島は美馬郡と三好郡を除くほぼ全域が1.0、香川は多くの市郡で、愛媛は全域0.9となっております。
今、地震地域係数が低いところでも大地震が起こっています。2004年の新潟県中越地震、2007年の新潟県中越沖地震と能登半島沖地震、2000年の鳥取県西部地震、2001年の芸予地震、日本列島が地震の活動期に入る中、今後も大地震が起こるおそれがあり、新しい知見に基づいて地震地域係数を見直す必要があるのではないでしょうか。
福岡市では、2005年3月の福岡県西方沖地震、マグニチュード7の地震が発生したことを契機に独自の条例を制定し、地震地域係数を0.8から1.0に引き上げました。これにより鉄筋の本数やコンクリート、そのほかの部材が多くなり、コストが上がることになると思いますが、建築に詳しい人物に話を聞くと、建築コストの多くは意匠部分であり、地震地域係数が0.1引き上げられても建物全体のコストでは大きな影響は生じないとも聞いております。行政や建築関係者は安心して生活できる建物を提供しなければならないと考えますし、安全とコストは比較して語れないと思います。
南海トラフ地震の発生確率が高まる高知県において、地震地域係数が0.9のままでいいのでしょうか、土木部長の御所見をお聞かせください。
最後に、平成25年9月定例会予算委員会で、坂本茂雄議員も質問されました引き家に関する質問をいたします。このときは、後継者育成に関し知事も必要性を感じておられるとの答弁でしたが、改めて質問をさせていただきます。
2016年4月14日から16日にかけ、震度6弱から震度7の地震が熊本県で発生しました。阿蘇山の火山灰土が堆積して広がるこの地方では、地盤の軟弱さから多くの建物が倒壊し、あるいは建物沈下が多数発生しました。
現地では、職人の不足やにわか業者の粗悪な仕事などから、被災住民の不安も相まって建物復興が遅々として進まなかったと聞いております。現地の情報によりますと、建物復旧のおくれにはもう一つ理由があり、悪質なリフォーム業者の流入を防ぐため、地元熊本での資材調達を制限する動きもあり、福岡などの業者は福岡で資材を調達し自社で輸送しての工事となりますから、輸送費も上乗せされてコストアップにつながったとも聞いております。また、建物沈下修正にあっては、にわか業者の安価な価格提示が避難所に広がり、被災者の間で価格のみが話題になっていたようですが、東日本大震災で多くの建物が液状化による沈下を起こした千葉県浦安市では、にわか業者の安価な施工を受け入れた建物に既に二次被害が起き始めたようであります。
こうしたことを踏まえて、あすは我が身の本県でも、この建物沈下修正の問題を真剣に検討する時期に来ていると私は考えております。
まず、建物沈下修正に関しまして、引き家を家業とする岡本直也さんという棟梁がいます。2011年3月に発生した東日本大震災では引き家の技術が再び注目され、高知市の土佐派の曳家岡本は、浦安市の当時の松崎秀樹市長より正式に浦安市の対策本部に招聘されました。土佐派の引き家とは、昭和南海大地震や伊勢湾台風及び昭和40年代の浸水被害が多かったころ、家屋の修復技術が必要とされ、高知県独自で進化した技術であります。当時は、必要とされる技術ゆえ、精査され独自の発展を遂げました。他県の引き家がコストを下げるために工具を大型化、機械化して、それを扱うために重機を取り入れて重量とび職のように変化していく中、船大工、宮大工の流れにある引き家大工の伝統を伝えているのが高知県の引き家です。岡本さんの活躍は、昨年4月に高知新聞で全7回にわたり連載されましたし、その2カ月後には東京新聞にも転載されて、一躍、高知県の職人が災害復興に寄与したことを全国に知らしめました。
引き家職人は、家を引くだけでなく回転させる技術を持つわけですので、液状化や地震で沈下した住宅の修復などを行うエキスパートであります。現在はほかにも耐圧版工法、アンダーピニング工法、薬液注入工法など沈下修正を行う工法が開発されていますが、県内にはこうした業者がほとんどおらず、出張料などから高額になることが予想されます。対して、引き家による修正は安価であること、そして社寺や古民家など伝統構法の建築物にも対応できることから、沈下修正の災害復旧には欠かせない技術であります。
昭和50年代には、高知市近郊だけでも13業者以上存在した土佐派の引き家は、現在、高知市、香南市野市町、いの町にそれぞれ1業者のみとなっております。このうちいの町の引き家は、80歳代半ばと高齢であり、後継者もいないので実際には引き家業務を休止しております。残る2業者も、全国を回ることで経営を存続させていますが、それに加えて受注が安定しないため新入社員の雇用ができていない状況であります。平成25年9月定例会予算委員会で、坂本茂雄議員もこの問題に触れられました。知事も後継者育成についての重要性を認める答弁をされておりましたが、当時は2名いた弟子も今は1名のみであります。
引き家が衰退した理由には、生活スタイルの変化などがありますが、加えて、例えば本県においては、昭和50年代後半に雨水の排水対策が充実してきたことで、主に高知市福井町などで行われていたかさ上げ工事が減ってきたことや、道路拡幅事業などに伴う移転補償の際、土地や住宅の構造上の制約により起業者が引き家工法を認定することが少なくなったことなどの理由が考えられます。
現在の引き家への依頼は、どうしても残しておきたい思い出の家を引き家してほしい、地盤沈下で傾いた家をジャッキアップして水平に直してほしい、主にこの2つとなっておりますが、曳家岡本に来る相談には、余りにも高額な見積もりであったり、逆に安価過ぎる見積もりに、施主が不安を覚えたなどもあるようであります。
現状、高知県内のみでは仕事が継続できないため、2社とも全国巡業をしております。仕事が切れる期間もありますので、高知市の曳家岡本は、弟子と派遣会社作業員によって仕事を行っておりました。昨年から助っ人に入っていた派遣や下請をなりわいとする高知市の親方が引き家の仕事にほれ込み、新たな局面に向かっていますが、この親方も拠点を愛知県に置くようで、残念ながら高知の引き家職人の人材確保にはつながりません。さらに、香南市野市町のひきや工房ころんぶすは、親方の橋本さん一人と派遣会社作業員という形態です。これでは次世代の高知の引き家職人は育ちません。既に徳島県や香川県では引き家ゼロとなっております。
そこで、土木部長にお尋ねいたします。
震災からの復興に必要となる引き家技術が途絶えないようにするためには、平時から業として成り立つ程度の業務があることが必要であると考えます。引き家や沈下修正に対して補助金を出すことは難しいかもしれませんが、引き家技術を存続させるために、一般の方々への周知など行政として何か後押しできないものでしょうか、土木部長に御所見をお聞かせいただきまして、以上で第1問とさせていただきます。
(知事尾崎正直君登壇)
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◎知事(尾崎正直君) 上田議員の御質問にお答えをいたします。
コンテンツ産業の振興についてお尋ねがございました。
コンテンツ産業は、今後も成長が見込まれる産業分野であるとともに、インターネット環境があれば事業が可能であるなど立地が地理的条件に左右されないことから、本県における発展が期待できる産業であります。また、若者の就職希望が多く、その雇用の受け皿として期待できる産業でもあります。
このため、県では、これまでもコンテンツ関連企業の誘致や企業間連携の促進による取引拡大の推進など、コンテンツ産業の振興に産業振興計画のもと取り組んでまいりました。その結果、これまでに首都圏のゲーム関連の2つの企業による合弁会社や人工知能の研究開発企業の子会社など9社の立地が実現をし、平成29年3月末時点で120人を超える新規雇用が生まれるなどの成果が出てきております。
こうした動きをより確かなものとするため、コンテンツ産業の振興については、本年4月から、製造業や事務系職場などの企業立地の経験とノウハウがあり、人材確保の施策も一体的に推進することができる商工労働部において取り組むことといたしました。こうした体制の整備やこれまでの取り組みが相まって、今年度は、本県への立地の決定や立地に向けた具体的な動きにつながっている企業が増加しているところです。
今後は、具体的に立地に向けた動きのある企業の早期立地をまずは目指してまいります。また、これまでに設けておりますコンテンツ企業に特化した立地助成制度による支援に加えて、今年度は、首都圏の人材を確保するためのネットワークの構築やアプリケーション開発の基礎的技術を習得できる人材育成講座の開催など、人材の確保・育成の取り組みを大幅に充実強化しております。
このような、本県ならではのきめの細やかな支援策について積極的な企業訪問などを通じて周知をし、新たな企業の本県への立地につなげるとともに企業の協業などによる起業や新事業展開を促進することで若者の雇用の創出にもつなげ、拡大再生産の好循環の実現を目指してまいりたいと考えております。
あわせまして、テレビドラマや映画、アニメ、漫画などの発信力のあるコンテンツとの連携による産業振興にも意を用いてまいりたいと考えております。
これまでも、例えば、大河ドラマ龍馬伝が放送された際には、それに合わせた博覧会の開催といった連携、またテレビドラマ遅咲きのヒマワリと移住のプロモーションの連携、全国漫画家大会議における漫画家の先生との連携、歴史民俗資料館における漫画サムライせんせいとのコラボレーションによる企画展の開催なども行ってきたところであります。さらに、今後も、幕末の歴史に関連した魅力的なコンテンツが続々と登場するものと承知をしています。テレビアニメでは、坂本龍馬が佩刀していた陸奥守吉行が擬人化されメーンキャストとなっている刀剣乱舞の放送が開始されると聞いておりますし、先ごろ撮影が開始されたサムライせんせいなどの映画にも大いに期待が高まっております。「志国高知 幕末維新博」を進めていく中で、まんが甲子園などの機会も生かして、こうした作品とのコラボレーションを行えないか、相手のあることではありますけれども、今後、検討、調整を行わせていただければと考えているところであります。
今後も、あらゆる方向にアンテナを広げて、産業振興、文化の振興につながるよう取り組んでまいりたいと考えております。さらに、こうしたコンテンツとのより継続的なかかわりをつくり出し、産業振興に生かす施策についても検討を深めてまいりたいと考えております。
私からは以上でございます。
(商工労働部長中澤一眞君登壇)
◎商工労働部長(中澤一眞君) コンテンツ産業の振興の担い手であるエンジニアやクリエーターの確保についてお尋ねがありました。
本県に立地をしましたコンテンツ関連企業による新規雇用は累計で120名を超えており、今後の採用意欲も高い状況にあります。今後とも企業立地を進め、コンテンツ産業の振興を図っていくためには、人材をいかに確保できるかが重要な鍵となりますことから、今年度は、人材確保及び育成のための施策を2つの点で充実強化しております。
まず1つ目は、首都圏の人材や企業とのネットワークの構築による県外からの人材確保の取り組みです。首都圏に在住をしている技術者やクリエーター、さらに企業とのネットワークを構築した上で、定期的な交流会を通じて県内の企業との交流を深めることにより、人材のUターン、Iターンによる就職につなげてまいります。また、この取り組みを通じて企業同士の事業連携や本県への企業立地などにもつなげてまいりたいと考えております。
2つ目は、現在コンテンツ産業で最も需要が多いアプリケーション開発人材の育成に向けて、土佐まるごとビジネスアカデミーにおけるアプリ開発人材育成講座を質と量の両面で拡充したことです。この講座の基礎技術編では、オンライン学習サービス、いわゆるe-ラーニングを活用して基礎的技術の習得を支援してまいります。これに続く応用編においては、実際にスマートフォンやパソコン上で動くアプリケーションをグループで開発することにより、受講者の実践的な技術力の向上につなげてまいりたいと考えております。
このように県外からの人材の確保と県内における人材の育成を両輪とした取り組みを推進することにより、さらなるコンテンツ産業の振興につなげてまいります。
(観光振興部長伊藤博明君登壇)
◎観光振興部長(伊藤博明君) まず、映画やドラマの誘致を通じた観光振興策への取り組みについてのお尋ねがありました。
映画やドラマの誘致につきましては、大きく3つの効果があると考えております。1点目は、多数の方の鑑賞につながることによるPR効果であり、2点目は撮影場所が後のロケ地めぐりなどの観光誘客につながること、3点目は大規模な撮影となる場合は宿泊などを中心にさまざまな経済効果がもたらされることです。
そのため、映画やドラマの誘致に向けましては、主に高知県観光コンベンション協会内の高知フィルムコミッションをワンストップ窓口としまして、撮影場所に関する情報提供、関係団体や地元の方々との調整、宿泊施設や食事場所などの情報提供、エキストラやボランティアスタッフの募集や手配、撮影場所探しなどの現場立ち会いといったさまざまな支援を行っているところです。
また、誘致が成功した場合にその映画やドラマがどれだけ本県の観光プロモーションにつながるかにつきましては、興行成績や視聴率、作品の内容、放映や放送されるエリア、本県の露出度合いなどによりさまざまであり、特に映画は他のコンテンツに比べ、事前にプロモーション効果の想定が難しいと考えております。
このため、個々の作品との連携につきましては、制作者側と個別に相談させていただきながら、本県観光への貢献度合いを見きわめていくことになりますが、当初から一定効果が見込まれるような、例えば原作がベストセラーになっているものや、映画やドラマとしてヒットし、その後シリーズ化されているものなどにつきましては、プロモーションなどにおいて積極的に連携していきやすいと考えております。プロモーション効果を事前に見定めることが難しい面はありますが、大変大きな効果をもたらせてくれる可能性もありますので、今後もチャンスを逃さず前向きに取り組んでまいりたいと考えております。
次に、幕末を題材にした映画祭の開催への連携・支援についてお尋ねがありました。
幕末を題材にしました映画祭の開催につきましては、「志国高知 幕末維新博」の開催時期にタイムリーな企画であり、また高知市の中心商店街や中央公園などを会場とした高知の春の一大イベント土佐のおきゃくに合わせて開催されますことは、県外観光客の呼び水として期待が持てると考えております。
現在、「志国高知 幕末維新博」におきましては、多くの誘客を図るため、大きく2つの枠組みでプロモーションに取り組んでおり、1つは全国的な盛り上がりをつくり出すための話題化であり、もう一つは博覧会の開催を広く周知することとなっております。
そうしたことから、博覧会開催期間におきましては、幕末を題材として上映される映画祭の企画内容などについて、主催者とも相談させていただき、県外からの多くの誘客につなげるプロモーションなどで連携・支援していくことが考えられます。
また、博覧会に関連して連携・支援する地域のイベント等については、博覧会以降も自立的に継続開催していただくことを基本としております。このためこの映画祭の開催においても、博覧会開催期間だけ、あるいは単年で終わるものではなく、ぜひともビジネスとして確立させて継続して誘客につながるものにしていただきたいと思いますし、継続開催されていくことになれば、その効果も踏まえて、よりよい連携が図れるものと考えております。
来年予定されています映画祭の開催は、県といたしましても大いに期待をしておりますし、応援させていただきたいと考えております。
(産業振興推進部長松尾晋次君登壇)
◎産業振興推進部長(松尾晋次君) まず、嶺北版CCRC構想の今後の支援についてお尋ねがありました。
県では、昨年高知家生涯活躍のまち構想を策定し、この構想の実現を目指すモデルとなる市町村に対して、それぞれの地域特性を生かした魅力ある生涯活躍のまち、いわゆるCCRCの構想づくりに向けた人的・財政的支援を積極的に行ってまいりました。
この結果、昨年度末には、本山町と土佐町とが連携して嶺北版生涯活躍のまち構想が策定をされております。この構想は、両町の高齢者福祉施設や医療機関、あったかふれあいセンターなど既存施設を活用しながら、豊かな自然など嶺北ならではの強みを生かし、都市部のアクティブシニア層などが安心して移住できる環境をつくり出すとともに、移住者に限らず、嶺北で暮らす全ての方々が生涯にわたって健康的に活躍できる魅力的なまちづくりを目指すものです。
これを受けて、土佐町では、今年度国の地方創生推進交付金を活用し、構想の具体化に向けた検討会を立ち上げる予定となっております。県としましては、まずはこの検討会に参画し、地域の方々とともに、事業計画や運営に当たっての課題と対応策などについて検討を進め、取り組みの熟度を上げていきたいと考えております。
第3期産業振興計画の目標である移住者1,000組の達成に向けましては、これまでの移住者の1割程度と決して多くはなかったアクティブシニア層の移住者を伸ばしていくことや、受け皿となります住宅の確保などが必要ですので、中山間地域でのモデルとなるこうした取り組みの実現に向けて、今後とも必要な支援を行ってまいります。
次に、高知市を拠点とする2段階移住の取り組みに対する支援についてお尋ねがありました。
2段階移住は、田舎暮らしには憧れるが踏み切れないといった方々をターゲットに、一旦都市機能の整った高知市に移住または滞在しながら県内市町村をめぐり情報収集した上で、自分に合った移住先を見つけていただこうとするものです。この取り組みは、こうした方々の移住に向けた行動への後押しになりますので、移住者の増加や中山間地域への新たな人の流れをつくることにもつながるものと考えております。
現在、高知市と他の33市町村による連携中枢都市圏の形成に向け、連携事業の一つとしてこの2段階移住の取り組みが検討されておりますが、1段階目の移住先となる高知市からは、お試し滞在施設をさらにふやすことが第一の課題であると伺っているところです。このため県としましては、まず滞在施設のさらなる増加に向け、県職員住宅の空き室情報を提供するとともに、民間の不動産団体に対しまして、短期の賃貸が可能な物件の確保についての協力要請などを行っているところです。
今後は、2段階目の移住候補地となります市町村を紹介する相談会やツアーの開催なども必要だと考えておりますので、高知市や他の市町村の意向も伺いながら、必要な支援を検討してまいりたいと考えております。
(林業振興・環境部長田所実君登壇)
◎林業振興・環境部長(田所実君) 竹を用いた高知発の新たなエネルギー事業システムの構築についてお尋ねがありました。
竹は、タケノコを食材とすることはもとより、身近な資材として生活に利用されてきましたが、安価な輸入品や代替品の普及により利用が減少し、竹林の適切な管理が行き届かなくなっています。このため一部の地域では、竹が隣接する人工林へ侵入してきたり、林内が暗くなることにより他の植物の生育を阻害し生物多様性の低下を招いていることなどが問題となっています。
議員のお話にありました竹を木質バイオマス発電に利用できる技術の開発により、発電用燃料として竹の新たな利用が進むことは、竹林の適正な管理とともに、竹を生かした産業振興にもつながるものと考えております。
今後、竹を活用した発電用燃料の製造を事業化するに当たっては、その採算性を確保することが必要でありますことから、分散した竹林から内部が空洞でかさばる竹を効率的に、そしてまとまった量を安定的に収集することが大きな課題であると考えております。このため、高知市内で竹を活用した集成材の生産に取り組んでいる事例などから、伐採、搬出に係るコストや竹材の収集可能量などについて情報収集等に取り組みますとともに、国や民間企業の協力もいただきながら、原料の調達や施設の整備を含め竹を発電用燃料として製造する事業の採算性について試算するなど、新たなエネルギーシステムの事業化の可能性を追求していきたいと考えております。
(土木部長福田敬大君登壇)
◎土木部長(福田敬大君) まず、災害対策に関しまして、県民の生命、財産を守るため、新たに建築されている木造住宅の耐震性の確保に係る県の取り組みについてのお尋ねがございました。
昨年4月に発生いたしました熊本地震では、木造建築物297棟が倒壊または崩壊する被害が発生し、その中に、平成12年以降の耐震基準で建築されたものが7棟含まれておりました。
国の被害原因分析調査では、この7棟のうち3棟は柱やはりなどの接合部の強度が不十分であったと、また1棟は敷地の崩壊が原因とされ、残り3棟につきましては明確な被害要因が確認できなかったと報告されております。一方で、長期優良住宅など建築基準法に定められた耐震基準に比べてより高い耐震性能を確保していた木造住宅については、被害の程度が小さかったことも報告をされております。
県としては、建築関係団体と連携して技術力などの向上を図る講習会を開催し、耐震性能の高い木造住宅の設計施工ができる事業者の育成に取り組んでいるところです。加えて、消費者の皆様には、耐震性能に関する正確な情報や、長期優良住宅の認定などを受ければ減税やローン金利の優遇を受けられるといったメリットについても周知してまいります。これらの取り組みにより、新たに建築される住宅が、より耐震性能の高いものとなるよう努めてまいります。
次に、鉄筋コンクリート建築物に関する地震地域係数が0.9のままでよいのかとのお尋ねがございました。
地震地域係数は、過去の地震の記録に基づく被害の程度や地震活動の状況等に応じて、1.0から0.7までの数値として地域ごとに建築基準法で規定されており、この数値が大きいほど耐震性能が高くなります。
お話のありました福岡市における地震地域係数の割り増しについては、断層帯が確認されている一部の市街地に限定して、高さが20メートルを超える建築物を新築する場合に、地震地域係数を0.8から1.0に割り増しするという努力義務が条例化されたものでございます。
議員が御指摘のとおり、地震地域係数という考え方は昭和27年に定められたものですが、昭和56年の耐震基準の改正時に全国的な見直しを行っております。昨年発生した熊本地震における国の被災状況の調査結果によりますと、現在の耐震基準で設計された鉄筋コンクリート建築物の倒壊は確認されておらず、地震地域係数が建物の倒壊に影響を与えたものではないとの報告がなされております。
このような状況の中で、現時点では国が地震地域係数の見直しを検討しているとは聞いておりませんが、非常に重要な事項でございますので、国の見解について確認し、その取り扱いについて研究してまいります。
なお、現在県が整備する公共施設につきましては、防災拠点として活用されることなども考慮し、地震地域係数を1.0に引き上げることにより、より高い耐震性の確保に努めております。
最後に、引き家技術を存続させるために、一般の方々への周知など行政として何か後押しができないかとのお尋ねがございました。
東北地方太平洋沖地震や熊本地震では、地盤の液状化によって建築物が沈下または傾斜する被害が発生をしております。南海トラフ地震が発生した際も、液状化しやすい軟弱な地盤ではこういった被害の発生が予想されます。
建築物の沈下や傾きは、地震による地盤の液状化だけでなく、建築物の重みによって地盤が圧縮されることなどによっても発生をいたします。この沈下や傾きを修正するのに有効な技術の一つが、引き家技術であると認識をしております。
沈下や傾斜した建築物の修正に対して補助金を交付することは困難ですが、耐震改修工事とあわせて沈下や傾斜を修正する場合は、それらの費用も含めて、住宅金融支援機構が扱っている低金利の融資を利用することができます。
現在、さまざまな地震対策の入り口である住宅の耐震化を強力に進めているところであり、その取り組みの中でこうしたインセンティブがあるという情報も提供し、引き家技術の周知や耐震改修とあわせた沈下、傾きの修正の推奨に努めてまいります。
◆3番(上田貢太郎君) 知事初め執行部の皆様方には、それぞれ御丁寧な答弁ありがとうございました。
2問目は、質問というより映画に関する御報告とお願いでございます。御紹介させていただきました映画サムライせんせいは、11月18日から地元高知で先行上映が行われますが、その後明治維新で連合を組んだ薩長土肥、鹿児島、山口、佐賀での上映が決定しております。さらにその後は、この連合軍が江戸に、そして函館まで攻め上った道を北上し、戊申上映と題して、鳥羽伏見、江戸、会津、五稜郭、つまり関西、中部、関東、東北、北海道まで上映が続き、王政復古を経て明治政府を樹立した道のりをたどります。こうした仕掛けは日本初で、既に上映する劇場とも商談に入っております。まさに、幕末維新上映にしようとプロデューサーは考えているようでございます。
また、御存じの方もいらっしゃると思いますが、ことしのカンヌのジャパンブースに、映画サムライせんせいの英語バージョンのポスターが張り出されておりまして、既に各国のバイヤーの目に触れておりますから、完成後は世界のバイヤーからのオファーも大いに期待できると思います。
撮影現場は、おかげさまで順調で、主演の市原隼人さんも絶好調での撮影のようでございます。1問目でも申しましたけれども、土佐の先人坂本龍馬は、時代を読み、行動し、日本を動かしました。彼のすばらしいところは、維新の立役者でありながら新たな発想で動いた商売人であったという点だと思います。桂浜に立つ龍馬像もそうですが、彼は幕臣の勝海舟に丸い地球儀を見せられ、その中のちっぽけな日本を知りました。そして、浦賀にあらわれた黒船を見て以来、彼は常に海の向こうを意識していました。それから150年たった今の高知に、龍馬の友達武市半平太がタイムスリップして、サムライせんせいという映画を撮影しています。
映画サムライせんせいのクランクイン以来、私のもとには、市原隼人はきょうはどこで撮影しているの、きょうは誰が高知に来るのなど、電話やメールがひっきりなしでございまして、これまでにも数々の映画が高知で撮影されたと思うんですが、高知がこれほど盛り上がった映画ロケは記憶にありません。
この映画にかかわるたくさんの仲間も、既に向いているのは海の向こうです。さらに、北米各地で開催される映画祭にも出品を計画しておりますから、サムライせんせいがカンヌに行くことができたら、ぜひ尾崎知事にも市原隼人さんとともにレッドカーペットを歩いていただければと思います。そして、土佐の地酒を、海、山の幸を世界に持っていきましょう。国も大いに注目し始めたコンテンツビジネスです。そして、映画サムライせんせいは、本県におけるユニオン号です。尾崎知事にも執行部の皆さんにも、この平成のユニオン号を使って世界に土佐の魅力をアピールしてください。尾崎知事、どうかよろしくお願いいたします。
知事へのお願いも無事済ませましたので、本会議での私の全ての質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。(拍手)